ポインティングデバイスを扱うのに最も適した人体の部位は、手腕部であることは 言うまでもありません。人間の体で最も器用さを発揮でき、最も作業に向いた手腕部のために マウスなどのデバイスが生み出されたのは当然のことと言えるでしょう。
このコーナーではすでに腕以外の部位を使った「腰デバイス」を紹介していますが、 これはもちろん「手がキーボードで塞がっているから」という問題を解決するために、 デスクワークではほとんど動かすことのない「腰」という部位に注目して考案されたものです。
しかし、やはり腰では本来デバイスを扱うための器用さを満たしているとは言えません。 他にどこか手腕部以外に、パソコンでの作業中に使えそうな人体の部位はないでしょうか? そこで今回はろーたろうさんの提案により、「首」という部位に注目してみることにしました。
首デバイス、その姿
上の図が、ろーたろうさんに提案していただいた際に送られてきた概念図です。
機構としては、タブレットを流用したシンプルなものです。頭上に水平になるように タブレット版を固定し、さらにその上からペンを吊るします。ただ、このままではペンが 軽すぎて不安定なので、粘土などで重さを増した方が安定するでしょう。
問題は、タブレット版が平面であることです。振り子のように円運動を描くペンに 対応するためには、凹面鏡のごとく窪んでいなければなりません。しかし、これは 個人レベルでの製作は困難と思われるため、あきらめざるを得ないでしょう。ペンを吊るす以外の方法としては、モニター上部にアームを取り付け、そのアームに ペンを取り付ける方法もあります。これならペンを吊るすよりも遥かに安定感はありますし、 クリックするときも頭をコンコンと少し持ち上げてやれば良いだけの話です。
しかし、この場合はうっかりその場で立ち上がったりしないように注意しなくてはなりません。実際の使用感としては、現時点では想像の範疇でしかありませんが、頭部は 人間一人の体重と比べてもかなりの比重を占める重い部分ですから、それを頻繁に動かす ということは相当首が疲れることが予想されます。
さらに、頭部を動かすということは当然のことながら視点を固定するのが困難に なるため、モニター画面が見づらくなるという欠点もあります。
前述の「器用さ」に関しても、腰よりは首の方が器用であるのかもしれませんが、 それでもやはり充分な器用さを発揮できるとは思えません。
何か、首デバイスならではのメリットはないものでしょうか?首デバイスならではのメリット。それは、ズバリ「バーチャル効果」しかありません。 頭部を動かすということは、視点を固定するのが難しいというのは前述した通りですが、 ならばそれを逆手にとって、モニター画面そのものを目の前に固定してやるのです。
つまり、首デバイスとヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)の併用です。
首デバイスとHMDを併用することにより、視界が不安定になるという問題は直ちに 解決するでしょう。さらに、3Dグラフィックを駆使したゲームなどでポインティングデバイス を使用するものをプレイすれば、首を動かすことにより視界が動くのですから、極めて バーチャルな操作感覚が体験できます。
実際、このようなデバイスはすでにかのアタリ社がジャガー用の周辺機器として開発 していたらしいのですが、結局日の目を見ることはありませんでした。 (関連記事)
ゲーム機の周辺機器としては、かつてない試みだっただけに残念で仕方がありません。 タカラのダイノバイザーも、首で操作するプレステ用コントローラーとしての機能があれば 売れるかどうかはともかく、単なるHMDの出来損ないの如き評価を受けることもなく かなりの注目を集めることができたと思うのですが、いかがなものでしょうか。