「マリア・タチバナ コスプレ劇場」

第1回

 楽屋には誰もいなかった。
マリア・タチバナは台本を手に取り、鏡の前に座った。
鏡の前には、仮面舞踏会で使われるようなアイマスクが置かれている。
「…今日はこれを演るのね…」
台本を置き、マリアはそのアイマスクを手に取った。赤いアイマスクは舞台の上でもかなり目立つだろう。
…他に用意するものは、黒いマントに、サーベル、帽子…ブーツ…
「…赤い彗星シャアを演じる…と言ったら信じる人もいるかもしれないわね…でもシャアのアイマスクは赤くはないし、サーベルも必要ないわね…」
シャアも演じてはみたいが、セーラも捨てがたい、などとつぶやきながらマリアは赤いアイマスクをかけてみる。
「…公演のポスターを見てセーラーVと間違える人もいるんじゃないかしら…でもこの衣装はセーラー服じゃないから大丈夫よね、きっと……見ようによってはタキシード仮面と間違える人とか…顔のアップだけ見たら仮面の忍者赤影なんて思う人は…いるかしら?…でも赤影でピンとくる人はかなり大人ね。ディスプレイを見ながら、鼻に親指を当てて『だいじょーぶ!』って笑って、大きな凧で空に舞い上がる人が数名いるに違いないわ…ああっ…で…でもミス・キャットと勘違いする人とか……タイムボカンのドロンジョ様とか……あああっ!仮面のキャラって多いのね…」
頭をかきむしり饒舌な独り言を激しくつぶやいた後、マリアはもう一度台本を読み始めた。
「……フランス大革命の前夜、花屋の娘として生まれた…」
(…歌の途中で、フランス語でかけ声をかけなければならないのね…カラオケでは苦労する曲だわ…)
昨日、カラオケで始めて歌った「さすらいの太陽」を口ずさみながら、練習に余念の無い、真面目なマリア・タチバナであった。
公演開始!果たしてマリアのコスプレは何だ?
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