北海道、冬の暮らし
雪が積もるといよいよ公共交通機関の利用は困難になり、専らクルマでの移動となりますが、とにかく冬道は時間がかかります。ひどいところになると道幅が半分以下になっていたりしますし、もちろん低速走行ですので、夏場の倍以上かかってしまうことも少なくありません。さらに路面がデコボコで激しく揺れたり跳ねたりするためバランスを保つのに必死で、乗せてもらうだけの身とはいえ相当に疲れます。寒さの影響も加わって首と肩なんかコリコリ。事故も多発しますのでドライバーもキツイです。
また家族や介助者には除雪という大仕事が加わります。これはホントに大変な作業で体を壊してしまう人もいるので、何も出来ない私などは天気予報に雪だるまマークが出ないようただひたすら念じ続ける日々を送るのです。
全国頸髄損傷者連絡会機関誌「頸損」No.87(2005年11月発行)より
「音声認識ソフト使い始めました」
川原六十夫(C4・5)
ついに私も音声認識ソフトを使い始めました。発売当初から使ってみよう、使ってみようと思いつつ、なかなかパソコンショップまで足を運ぶ機会がなかったので、いつものように延び延びになっていました。
私が使用しているのは、IBMのViaVoiceミレニアムです。実際に使用してみた感想としては、これがまぁ、とっても便利!!!特に私のように上肢の機能障害が顕著で、キーボードからの入力に結構苦労している者にとっては、とても強い味方になってくれるように感じています。ただし、キーボード入力が不自由なくこなせる人には、まどろっこしいかもしれません。
最初のセッティングが少々面倒ではあるものの、使うごとに内蔵辞書が学習していくので認識率もどんどん向上していきます。もちろん、ひとつの間違いもなく思った通りに入力するというのはまず無理ですが、それでもコツさえつかめば、8割ぐらいは正確に入力することができると思います。
店頭価格で約8,000円(マイク付き)〜使用する機種により対応する製品と価格が異なります〜でした。
2001年3月、北国の頸損かわら版への投稿から
「筏義人京大名誉教授の講演を聞いて」
7月21日、札幌市教育文化会館で行われた京都大学再生医科学研究所名誉教授・筏義人氏の講演会「人のからだはどこまで再生できる?」に行って来ました。
講演では50枚以上のスライドを使い、再生医学の歩みから現状、未来への展望などについて語られました。中枢神経については言及されませんでしたが、ほんの数ヶ月前に米国の研究者が手指の関節の再生に成功したとの紹介があり、再生は単一の器官ごとでという漠然とした認識しか持ち合わせていなかった私には、複数の器官によって構成される関節が再生されたことは大きな驚きでした。
教授は、この分野における進歩は確かに目覚ましいものがあり、この先どうなっていくのか予測は難しいが、基礎的な研究の成果が臨床応用に直結するわけではなく、再生医学に対する過度の期待は禁物であると強調されていました。
我々もクールに注目していきましょう。
1999年7月、せきずい基金ニュースより
「 切断脊髄接合手術〜自家末梢神経移植法 」施行される
埼玉医科大学脳神経外科(長島親男教授)は、前ジョージタウン大学脳神経外科学教授カール・シー・ケイオー医師と共同で、アメリカンフットボール試合中の事故で頸髄を損傷、四肢麻痺となったラルフ・モンテマロさん(29歳、米ニューヨーク州ロチェスター市)に切断脊髄接合手術を施行しました。
この手術は、切断された脊髄の両断端部を切除し、両断面に患者自身の腹部から採取した10数本の末梢神経を移植して接合させた後、同部に大網膜を移植するというもので、これが世界初の症例です。
切断脊髄接合手術(自家末梢神経移植法)その後の経過
埼玉医科大学付属病院脳神経外科で行なわれた切断脊髄接合手術(第8号にて報告)の経過と予後について、手術当時の主任教授であった長島親男先生にお尋ねしました。
移植部に電位差は認められたが、現在のところ臨床的には変化は見られないということでした。長島先生は既に退官されており、その後はこの手術も行われていませんが、ワシントンDCのDR.カウが同じような研究をしているそうです。
何か新しい知見が得られれば、お聞きしたい旨お願いしました。
1998年10月、北国の頸損かわら版より
「環境制御装置の活用法について」
川原六十夫(C4・5)
環境制御装置ECSは、その名の通り温度・明暗・体位といった基本的な生活環境を自らの操作でコントロールできるようにするための装置です。いくら麻痺が高度な四肢麻痺者であっても、他者の手を借りずに自分自身で行える動作はひとつでも多い方が良いと考えるのは私だけではないでしょう。
現在のECSにおいてその適応と考えられるのは、自力によるトランスファーや体位の変換が行えず、通常の操作方法では身の回りの電化製品を操作する事ができない、または体位によって操作不能になってしまうといった重度の四肢麻痺者です。
私自身も左C4・右C5A頸髄損傷による重度四肢麻痺で、環境制御装置(メディケアR-508S)を利用している1人です。生活の全てに全介助を要しますが、ECS導入後は単独で過ごす事が苦ではなくなり、その時間も大幅に増えました。
ECSによって制御可能となる動作の具体例としては、テレビ・ビデオ・オーディオ・扇風機等の一般的な家電製品の操作全般、電動ベッドの操作(背・膝部分の上げ下げ、高さ調整、体交補助機能等)、電話(かける・受ける)、インターホン通話、電気錠(解・施錠)、冷暖房(ON/OFF、温度・強弱の設定)、室内照明(ON/OFF、明るさ調整)、電動カーテン・ブラインドの開閉等が挙げられます。またECSとHA(ホームオートメーション)システムとを組み合わせる事により、玄関の呼び鈴にハンズフリーのインターフォンで応答し、テレビの画面で来客を確認して玄関ドアの電磁ロックを開/施錠させる等という一連の動作を、呼(吸)気スイッチやタッチ・センサーを介して四肢麻痺者自身がベッドにいながらにして行えるようになります。
ECSはまだまだ高価であるうえに重度障害者に対する日常生活用具の給付対象に指定されていないという問題はありますが、高度の麻痺を有する当事者自らが基本的な生活環境を制御する事を可能にし、その結果として介助者の負担を軽減させられるという事によって得られる精神的充足感には計り知れないものがあるように思います。
最近は日本国内でも多くのメーカーが環境制御装置ECSを製造するようになりましたが、現在の主流は友愛メディカルサービス製のR-508S
(北海道地区取扱店〜パシフィックサプライ札幌営業所/札幌市白石区南郷通り14丁目北2ー33パブリッックシャイン1F・Tel.011-862-1136
/ Fax.011-862-1002 )であるようです。
このR-508Sが他の機種に比べて優れていると考えられるポイントとして、チャンネル数が豊富で現在ほとんどの家電製品で採用されている赤外線方式のリモコン信号を多数登録させられるのでより多くの電気機器の操作が可能、赤外線信号の登録方法が簡単で家電製品を買い換えた際の再設定が容易、R-50Dというチャンネル増設専用機が用意されており拡張性に富む、他の機種に比べ表示器がコンパクトで場所をとらない、コストパフォーマンス等が挙げられます。
現行機種の総チャンネル数は50CHで(内部の切り換えスイッチによって無電圧側回路を10CHプラスして合計60CHにする事が可能)、うち有電圧8CH、無電圧42CH(52CH)という構成になっています。
「00」〜「07」CH(有電圧)
電動ベッドのリモコンケーブル、ハンズフリーホンや電気錠のケーブル、その他の電気器具の有線リモコンや電源コード等を接続します。ただし、接続にはある程度の専門知識が必要ですので、施工は業者に依頼した方が良いと思われます。電動ベッドの場合、1動作に対し1回路の割り当てが必要です。NTTシルバーホンふれあいS、電気錠は各々1回路で制御可能です。
特殊な電源リレー(EP074001/パシフィックサプライ)を仲介させると、リモコン機能のない電気製品(600Wまで)の電源制御が可能になります。またこのうちの1回路を利用してR-50Dを接続すると、無電圧側を60CH増設(合計120CH)する事ができます。
「08 」〜「50」CH(無電圧・設定により08 〜60CH)
赤外線方式のリモコン信号を記憶し、必要に応じて発信します。赤外線信号の登録はいたって簡単で、本体の受光部に向かって信号を送信するだけです。R-508Sから発信される赤外線信号の有効範囲は7m以内ですが、直射日光が当たる場所では正常に作動しない事があるため、設置場所に注意してください。

●ECSに接続・登録して使用する電機製品の選び方
電話や電気錠等のようにケーブルによる有電圧回路への接続が前提となる場合を除いては、設定が容易でチャンネル数の豊富な無電圧回路に登録できるように赤外線リモコンの付属している機種、それもリモコンに多くの機能が割り当てられているものを選択するべきです。ビデオデッキを例にとると、リモコンの表示部でタイマー録画の設定を行い本体へデータ転送する方式のものではECSで録画予約をする事はできませんが、テレビの画面やビデオ本体に設定事項を表示させ、リモコンで設定を行う方式のものであればそれが可能です。
またひとつの信号で複数の操作を実行させられるような設定になっている方がECSの回路をより合理的に利用する事ができます。例えばテレビのチャンネルを変えるための信号を記憶させる場合、「0」〜「9」までの数字ボタンを組み合わせて選択する方式のリモコンではその全ての信号を登録しなければならず、この操作だけでECS無電圧側の10回路を使ってしまいますが、「チャンネル+」というようにスキャニングによってチャンネルを選択する機種であればECS側で必要となるのは1回路だけで済みます。
電動ベッドのリモコンケーブルを有電圧回路に接続する場合でも、複数のモーターによって背上げ・膝上げといった各々の動作を独立して行うタイプのベッドよりも、それらが連動する1モーター方式の方がECSのチャンネルをより有効に使う事ができます。私はパラマウントベッド製の体交機能付き電動ベッドを使用していますが、背上げ・膝上げ、高さ調節、体交機能の全てのケーブルをECSに接続させたため、電動ベッドだけで有電圧側の6回路を使ってしまっています。ちなみに体交機能についてですが、これはあくまで介助者の補助的な役割を果たす程度のものであり、ベッド操作だけで十分な除圧効果が得られる訳ではありません。
ECSに接続して使用する電話機としては「NTTシルバ−ホンふれあいS」が一般的です。この電話機は受話器を取る事なくかかってきた電話を自動的に着信させ、そのまま通話する事が可能なハンズフリ−ホンです。障害者に対する賃貸割引制度があり、通常の半額で電話機本体をレンタル使用する事ができます。専用オプションスイッチ(プッシュ・呼気)が用意されているので、この電話機単独の利用も可能です。イヤホンやヘッドホンを併用しないと相手の声が部屋中に響き渡り、またマイクの感度の問題からかなり大きな声で話さないと相手に伝わらない場合もありますが、受話器の保持やボタン操作の不能な四肢麻痺者にとっては、外部との連絡を可能にしてくれる有難い存在です。一般のコードレスホンでハンズフリー機能を備えている製品も出回っていますが、それらをECSに接続するのは難しいと思われます。
●呼気スイッチの設置
現実の問題としてECSを必要とするようなレベルにある四肢麻痺者では、どうしてもベッド上での生活が中心になってしまいます。したがって呼気スイッチはベッドあるいはベッドサイドに設置する事になります。ECSによって電動ベッドを自分で操作できる訳ですから、いかなる体勢にあっても口元に呼気スイッチが位置するように設置する必要がありますが、不随意運動等によって身体自体が変位してしまうとスイッチが口元から離れてしまう恐れがあります。マットに呼気スイッチを固定させるためのステーが用意されていますが、ベッドメイキングの度に取り外さなくてはならず面倒です。
私は適当な長さに切断した直径6mmのビニールチューブを呼気スイッチの吹き込み口に差し込み、もう一方の先端をマジックテープのついた布製ベルトで手背に固定して必要に応じて口元に運び操作しています。私の場合にはベッド上における全ての体位で呼気スイッチの操作が可能で、パソコンのキーボード入力等をする際に手首に装着するデヴァイスもこのベルトで固定しており、キーボードを叩きながらECSを作動させています。
チューブの長さの調節によっては車椅子に乗った状態でもECSの操作が可能になるので、片手だけでも顎部まで動かす事のできる人には便利な方法だと思います。また手の可動域に制限のある人の場合でも、チューブをヘッドセットに固定する等して応用できます。ビニールチューブはホームセンターで購入し、汚れる度に交換しています。
北海道頸髄損傷者連絡会レポート集・1997年
重度四肢麻痺者、特に高位頚髄損傷者が
Macを操作するためのデヴァイスアクセシビリティ
Macintosh(以下Mac)は障害者にとって扱い易いコンピューターであるというのが定説となっています。それは今でこそほとんどのパーソナルコンピューターに備えられるようになった障害者向けの入力補助ソフトの開発に積極的に取り組みいち早く導入した事、アップルディスアビリティセンター(ADC)という対障害者サービス専門のセクションを持ち、あらゆる障害者のコンピューターアクセスに関するニーズに対応しうる豊富な機器が用意されている事等が根拠になっていると考えられます。
また特に四肢麻痺者に有利な条件として、マウスのクリックボタンがひとつである、キーボード がコンパクトで四肢の可動域に制限のある人にも操作しやすい(Performa等に標準装備のApple
KeyboardJISの場合)、他の多くのコンピューターと異なり電源スイッチがキーボードに設置されているために電源のON/OFFが行いやすく、また周辺機器の電源もキーボードからの制御が可能(後述)、という事等が挙げられます。
以下、麻痺の程度に応じたMacの入力方法を順を追って紹介します。
●マウスやトラックボールを扱う事のできない四肢麻痺者がマウススティックやヘッドポインター等のポインティングデヴァイス、あるいは片手・指1本によるキーボード入力のみによってMacを操作する場合
『イージーアクセス』Easy Access というソフトウェア(コントロールパネルデヴァイス)を利用します。これはMac-OS(漢字Talk)に標準添付されているもので、次のようなアイコンで表示されます。
ただし購入時の状態ではハードディスクに組み込まれていない機種もあるので、この場合にはシステムディスクからカスタムインストールする必要があります。「マウスキー」「スローキー」「複合キー」という機能があり、これらの設定によってキーボードによるマウス操作の代行、キー入力に対する反応時間の調節、及びシフトロック等の際の順次入力が可能になります。
Windows 95の「ユーザー補助」、IBMの「Access Dos」等がこれに相当します。
「マウスキー」
この設定により通常マウスによって行われるポインターの移動、クリック、ダブルクリック、ドラッグ&ドロップの各操作をテンキーからの入力で制御できるようになります。テンキーの「1〜4、6〜9」がポインターの上下左右・斜めの8方向移動に対応しており、クリックボタンは「5」、ドラッグは「0」による選択及びポインター移動、範囲選択は「0」で始点、A「.
」で終点を指定して行います。「clear」を押すと設定が解除されてしまうので注意してください。
またポインターの移動速度、一定速度に達するまでの時間を各々8段階、5段階調整する事ができるので、イージーアクセスと同じコントロールパネルにある「マウス」項目におィけるダブルクリックの感知速度の調整(3段階)を併用してユーザーの使いやすいように設定します。
パワーブックシリーズにはテンキーが備えられていないため、マウスキーを利用するためには外付けのテンキー(ADBポートに接続)が必要です。
「スローキー」
キー入力を行ってからその操作が実行されるまでの時間を5段階調整します。不随意運動による誤操作を防止します。
「複合キー」
他のキーとの同時入力によって機能をなす「shift」「command」「option」「control」の各キーをロックする事により、片手やスティック1本での順次入力を可能にします。
ただしMac起動時、イージーアクセスが立ち上がる前の段階での入力が必要なデスクトップの再構築(power+command+option)、及びPRAMクリア(power+command+option+P+R)は実行できません。また当然イージーアクセス自体が作動しないようなフリーズを起こした場合の強制終了(command+option+esc)・強制再起動(command+control+Power)は実行不能です。
上肢の可動域に著しい制限があり通常のキーボードでは大きすぎて対応できない場合には、『Tashミニキーボード』〜H115×W200×D70mm・テンキーなし/ADCや、『小型キーボード』〜オーダーメイド・葉書サイズでキーは8×8mm・シフトロック可能/友愛メディカルサービス(Tel.052-792-7311)等を活用する方法もあります。
他にキーボードをカスタマイズする方法として『キネックス 』Ke:nx / ADC(ADBポートに接続して使用するインターフェース)の利用があり、補助キーボード機能によりキーボ{ードの配列を自分の使いやすいように並べ変えたり、特定のキーに新たな機能を登録させる事ができます。
また『連動ノイズフィルター・タップATC-NF52MAC』/audio-technicaを用いると、ADB(Apple Desktop
Bus)ポートの電流を検知する事によってMac本体の電源 ON/OFFに連動してプリンター、モデムなどの周辺機器4機(時間差連動で外部記憶装置にも対応)の電源をON/OFFさせる事が可能です。一部の機種を除いてパワーブックにも対応しています。
●キーボード入力できない人がマウスやトラックボールの操作だけで全ての入力動作を行う場合
『イージープロローグ』Easy Prologue / ADC というソフトウェアを利用します。これはモニター上にキーボードを表示させ、マウスあるいはトラックボールによるポインティングだけでコンピューターのあらゆる操作を可能にするというもので、『キネックス』にもオンスクリーンキーボードという同様の機能が備えられています。スクリーンに表示されるキーボードの種類(ひらがな・カタカナ・英字等)や大きさは自由に変更できますが、キーの配列は変えられません。
使用期限のあるデモンストレーション版(tukamoto@svax.nttpc.co.jp)があります。
クリックボタンのロック機能があり、ボール径が大きく四肢麻痺者にも比較的操作しやすいと
思われるMac用トラックボールとしてKensingtonターボマウス、スティングレイトラックボール(ラビックス)、サンワサプライTB-200MAC・TB-350MAC
等があります。
●キーボード入力もマウスやトラックボールを扱う事もできない人が頭部の動きと呼 (吸)気流入力によってMacを操作するための補助入力装置
『ヘッドマスター・プラス』Head Master Plus / ADC
頭部に装着するセンサーでポインティングを行い、呼吸気スイッチ(あるいはプッシュスイッチ)によってクリックボタンの操作やコマンドの選択をコントロールする装置です。
マウスと同様の機能を再現できるのであらゆるアプリケーションソフトの利用が可能ですが、ドラッギングやメニューバーのプルダウン等のようにマウスボタンを押し続けた状態にしなければならない場合にはその間吸気し続ける必要があり、この動作は肺活量の少ない高位頚髄損傷者には多少しんどいかもしれません。ただこの問題は、ある種のユーティリティソフトを活用する事でかなり改善させられると思います。(後述のユーティリティソフトの項参照)
ヘッドセット型の装置であるためにベッド上で側臥位をとっているような状態での使用は難しいと思いますが、頭部さえ動かす事ができればかなりルーズな体位でも操作が可能です。キーボード・マウス・トラックボールを操作できない高位頚髄損傷者で呼吸器系に問題のない人に適しています。姉妹品としてヘッドマスター・プラスからケーブルを取り除く事によって操作性を高めた『ヘッドマスター・リモート』Head
Master Remote / ADC があります。
『ヘッドマウス』Headmouse / ADC
前頭部に装着したポインティングのためのセンサー(反射シール)で赤外線信号を反射させ、頭の動きによってマウスコントロールするための装置で、添付ソフトのマジックカーソルによりクリック・ダブルクリック・ドラッグ操作が可能になります。デスクトップ・ノートブックともに使用でき、またWindows
にも対応しています。
『トラッカー』Tracker / ADC
頭部に装着したワイヤレスのヘッドポインタ^ー(反射マーカー)でポインティングを行うための装置で、添付ソフトのマジックカーソルを併用する事により頭部の動きだけでクリック・ダブルクリック・ドラッグを含むマウス操作が可能になります。小型でパワーブックにも対応していますが、ADCによると動作が不安定であまり推奨できないとの事です。
●最重度の四肢麻痺者が身体のごく一部の筋収縮を利用してMacを操作できるようにするための設定
『キネックス』Ke:nx / ADC というインターフェイスを介在させる事により、個々の身体機能に応じた入力スイッチを利用してディスプレイ上の文字盤から文字をスキャン入力したり、モールスコードの入力で一般のアプリケーションを利用できるようになります。入力スイッチは多種用意されており、身体の一部のわずかな動き(瞬き、吐息、皮膚の振動等)でMacを操作する事が可能です。
●『パワーブックシリーズ』Macintosh Power Book series について
重度四肢麻痺者の多くはベッドでの生活を主体としています。ベッド上でMacを使用する場合には、スペースや可動性の点から考えてPerformaやPowerMac等のデスクトップ機よりノートブック型の方が扱いやすいのは明らかです。ベッド周りで頻繁に行われる様々な介助やトランスファ@ーの度に重たいデスクトップ機の乗ったオーバーテーブルを移動させなければならなかったり、電源コードやケーブルが周囲に氾濫していたのでは介助者の負担が増すばかりです。その事を考えるとノートブックの持つ小型・軽量という利点は大きく、修理や改造が必要になった際の運搬も容易です。また充電によって一定時間使用できるので、ケーブルさばきの煩わしさもデスクトップ機ほどではありません。
Macのノートブックは『パワーブック』というシリーズ名で統一されており、デスクトップ型に比べてディスプレイが小型であるために多少見にくいという点はありますが、機能的には全く変わりません。ただし前述の如くテンキーが設定されていないので、そのままではイージーアクセスの機能をフルに活用する事はできず、またトラックパッド(マウスの代わりとなるポインティングデヴァイス)が操作盤の手前側半分のスペースを占めているためにキーが身体から遠くに位置する事になり、上肢の可動域に制限のある四肢麻痺者が手指等によるキー入力で操作する場合にはかなり使いづらいと思います。
このトラックパッドが四肢麻痺者にも扱いやすいものであればさほど問題はないのですが、トラックボールに比べるとかなりの微妙さが必要で、特にスティックでの操作はかなり難しいものと思われます。勿論ADBポートに外付けのキーボードやトラックボールを接続して対応する事は可能です。省スペースというパワーブック最大の利点は失われてしまいますが。
キーボードからの入力が不能でマウスやトラックボールを操作する事もできない四肢麻痺者が主にベッド上でオーバーテーブル等を利用してMacを扱う場合には、パワーブックとヘッドマスター、あるいはヘッドマウスを組み合わせて使用するのが現時点でのベストチョイスではないかと思います。
●頚髄損傷に代表されるような重度四肢麻痺者が、以上のような補助入力プログラムや特殊入力装置を用いてMacを操作する場合に、より快適な入力環境を設定しうると考えられるユーティリティソフトをいくつか紹介します。ただし、動作確認は行っていません。
・CE Quickeys(市販ソフト)/SRA (Tel.03-3234-4211)
あらゆる機能にショートカットが設定できる他、一連の操作手順を記録してショートカットに登録する事を可能にするマクロ登録・ショートカットユーティリティ。
・Short Cut+ (Freeware)/NIFTY-Serve FMACPRO LIB5 INIT/cdev...
特別メニューの「ウインドウの整頓」「ゴミ箱を空に」「再起動」「システム終了」及び「スリープ」にショートカットを割り当てるソフト。
・ApplicationMenu (Freely Distributed)/AppleLink : Rosenstein1
, Internet : lsr@apple.com
ポインターの位置にポップアップメニューを表示させる事でアプリケーションの切り替えを容易にし、複数のアプリケーションを同時に開いて作業をする場合等に能率向上を図るためのプログラム。
・MoveIt! (Freeware)/NIFTY-Serve FMACPRO LIB5 INIT/cdev...
@ダイアローグなどが開く際にデフォルトのボタン上に自動的にポインターを移動させるコントロールパネルデヴァイス。
・Relax Finger(Freeware) /NIFTY-Serve FMACPRO
メニューバー上でマウスボタンをクリックするとメニューがプルダウンしたままになり、マウスボタンを離した状態でメニューが選択できるようにする。ポップアップメニュー対応。
・TechTool(Freely Distributed) http://micromat.com/mmcs/
Macのメンテナンスには欠かせない“PRAMクリア”と“デスクトップの再構築”。
通常は複数のキーの同時押下が必要なこアの操作をポインティングとクリックだけで実行させる事ができる。
●アップルディスアビリティセンター(ADC)について
ここで紹介している入力装置やソフトウェアで「ADC」と併記されているものは全て“アップルディスアビリティセンター”で取り扱っている製品です。
ADCには身体障害者に対する割引制度があり(対象となるのは全てのアップル製品)、一般のPCショップよりも低価格で購入できォる場合があります。アップル社の製品は全てオープンプライス制を採用していますが、ADCに問い合わせるとその時点での販売価格を教えてもらえます。
またアップルディスアビリティプログラムという名目で、個々の障害の状況に応じた入力方法のセットアップを提案するサービスも行っています。
アップルディスアビリティセンター Apple Disability Center
東京:〒173 東京都板橋区大和町23-3
Tel.03-3964-9649 / Fax.03-5248-1131
大阪:〒550 大阪府大阪市西区新町1-8-3 四ッ橋天祥ビル6号館 801
Tel.06-536-5594 / Fax.06-536-5595
(道内に営業所・代理店等はありません)
●これからパソコンを購入される四肢麻痺者の方へ
これまで紹介してきたようにMacは多様な入力方法を持つ優れたコンピューターですが、やはりウィークポイントもあります。それは最重度の四肢麻痺者がコンピューターリテラシーを獲得するための最も有効な手段と思われる音声入力がサポートされていないという点で、この分野では「Windows
Sound System」というソフトウェアが応用されてきたDOS/Vや98シリーズの方が先行しているようです。ただ、従来の音声入力システムというのはいずれも補助的なものに過ぎず、全ての操作がスムーズにストレスなく行えるようなレベルには達していませんでした。しかし最近になって、これからのパソコンが備えるべき条件のひとつとして音声入力は不可欠であるというのが共通の認識として定着し始めた事から、各メーカーではより実用的な日本語認識システムの開発へ向けて積極的に取り組んでいるようです。IBMでは既に「IBM
VoiceType Dictation for Windows95」という読み上げた文章をテキストに変換するソフトウェアを開発しており、それを組み込んだ製品の販売を開始しています。またアップルコンピュータも最近の発表の中で、音声による日本語入力システムを開発中であり1997年中の完成を目指している事を明らかにしています。四肢の麻痺が高度で音声入力をメインに考えているなら、各社の製品が出揃うまで購入を猶予された方が得策かもしれません。
Macに限らず四肢麻痺者がパソコンを使用する場合には、同時に電話機の操作も行えるように環境設定される事をお薦めします。これはマニュアルでは解決できない疑問やトラブルが生じた場合にメーカーで行っている電話によるサポートを受けやすいからで、ハンズフリーホンならアドバイスを聞きながら自分でコンピューターを操作する事ができます。
Performaには“パフォーマホットライン”というフリーダイアル(i通話無料)の初心者を対象としたサポートシステムがあり、購入後1年間という期間限定ながら初歩的な質問に対して非常に親切、丁寧に答えてくれます。Performa以外の機種に対しては“アップルカスタマーアシスタンスセンター(CAC)/Tel.0120-61-5800
Fax.0120-62-5800”が同様のサービスを行っており、ここでは購入以前の問い合わせも受け付けています。
また運搬やセットアップ等の全てにおいて他者の手を借りなければならない四肢麻痺者は、パソコン購入時にRAMの増設を済ませてしまった方が良いと思います。ノート型やセパレート型のデスクトップ機であればそれほどでもありませんが、Performaのようなモニター一体型の機種をショップまで運ぶのは大変です。メモリー増設の作業自体はいたって簡単ですが、メーカー指定店以外で本体を開けた場合のトラブルは保証の対象外になってしまうので注意してください。
このレポ|ートを書いている1997年1月現在、ECSと同様にパソコンも重度肢体不自由者に対する日常生活用具の給付対象品目には指定されていません。この種のもので給付が認められているのはワープロと電動タイプライターだけで、受給できるのはこのどちらか一方です。ここで言うワープロとニはあくまでワープロ専用機の事であり、ワープロソフトを利用して文章を作成するパソコンについてはその対象外とされています。したがってパソコンの購入に際して公的助成を受けるのはかなり難しい状況にあります。
ワープロ専用機ではパソコンとの併用を前提に作られた障害者向けの特殊入力装置は利用できません。筆者も地元の福祉事務所に「通常のワープロでは入力操作に限界があるので、パソコンを給付してほしい」と交渉した経験があるのですが、行政側の対応はワープロ以外の申請は受け付けられないという一点張りでした。身体障害者福祉法によって定められているワープロの基準には「かな、漢字、英数字による文書作成が可能で、編集、校正、記憶及び印刷機能を有し、障害者が容易に使用し得るもの」と記載されています。ところがワープロ専用機に比べはるかに容易に使用し得る事が明らかで、重篤な障害を持つ人達にも利用できる可能性のあるパソコンは認可されないのです。これではこの制度の存在理由を自ら否定しているようなものです。大体タイプライターなどという今では死語となりつつあるような品目に需要があるとはとても思えません。これらの機器に対する的確な認識をもとに制度を改正するべきです。
もし仮にパソコンの給付申請が認可されたとしても、この制度には各自治体の指定業者(多くの場合は医療器具取扱業者)を通して納品されなければならないというくだらない規制があるために、好きな物を好きな所からという訳にはいきません。そのため低価格化が進み、さらには定価の40〜50%引き販売が常識となっているパソコンも定価での取り引きという事になってしまい、また当然支給額にも上限(ワープロ申請の場合、全額支給で最高118,500円〜1997年1月現在)があるために、市販業者から全額自費で購入した方が自己負担が少なくすむ場合がほとんどなのが実状です。
終わりに
環境制御装置R-508S 及びMacintosh Computerについて説明してきました。残念ながら日本では現在この両者を連動させて利用する事ができません。この不条理な現象は電波法に基づく規制によってもたらされているものらしく、便利な物を便利な物として利用できるようにするためにはこの国自体のシステムをヴァージョンアップする必要があるようです。いずれにしても将来的には室内環境の全てがコンピュータによって集中制御され、高感度マイクを介しての音声指示によって自由に環境設定する事が可能になると思います。“ブレードランナー”の世界です。
北海道頸髄損傷者連絡会レポート集・1997年






「私の運転免許について」
私が入院中に流した運転免許を再交付してもらうため、去年の12月に札幌の運転免許試験場に行ったとき、そこの担当係官の対応は非常に良かったです。私くらいの障害レベルを持った者が車の運転ができるかはかなり難しいところですが、『運転免許を取得していた人が障害者になった場合には、できるだけ再交付しよう』という態度で対応してくれました。私の障害レベルに応じた手動運転装置があるのかを、岩見沢にあるニッシン自動車工業に電話で問い合わせて確認した後に、運転免許証の再交付となりました。運転席に自力で座れるかどうか、車いすを積み込めるかなどにはほとんど触れずに、思ったよりも簡単に面倒なことはなく手続きは終わりました。
「シンポジウムを聞いて」
障害者をリーダーとしたこのような活動をしている団体『ジョイプロジェクト』があることを知り、たいへん頼もしく感じたのと同時に、自分たちも問題意識を持って、できる範囲で何かをしなければと感じました。『ジョイプロジェクト』代表の渡辺さんやシンポジウムに参加していた他の障害者の発言を聞いていると、ささいなことでも良いから、社会に向かって発言すべきであると思い知らされました。自分たちがこうあって欲しいと感じていること、不都合に感じていること、改善して欲しいこと、提供して欲しいサービス、頭にきていること、などなど、もっともっと積極的に表現しなくてはならないと、つくづく感じた次第です。黙っていては国は何もしてくれないし、社会は分かってくれないのだから。集団の力やマスコミの力をおおいに利用して積極的に自分たちの要求をアピールしようではありませんか。
日本でも障害者に対する認識が少しずつは変わってきているような気がします。より大きな変化を起こすために、皆さんの声を表に出しましょう。(畠山廉英)
97年7月、北海道頸髄損傷者連絡会かわら版より転載