report & column


 電動車いすのバッテリー寿命について

【質問】

 電動車いすのバッテリー寿命について教えて下さい。
 密閉型(シールド型)鉛蓄電池… イマセンのEMC-220に積んでいるタイプです…が寿命なのか充電できなくなりました。電源が入らなくなり(コンセントにつなぐと充電器のリレー音はカチカチなるがコントローラーのLEDがつかない)出入りの業者さんに聞くと「完全放電しているから充電されない。ガソリンスタンドで充電してもらって」と言われたそうです。しかしガソリンスタンドではできないと言われてしまって困っています。とのことです。
 どのような使い方をしていたのかがよくわからないのですが、以前、密閉型蓄電池は充電できる回数が決まっているという話しを聞いたことがありますが、そうなのでしょうか?
 上記のような状態になってしまったらやはり寿命でしょうか?どのくらいの期間もしくは充電回数で寿命になるものなのでしょう?どんなことでも構いませんので教えてください。
 あと、メーカー以外で電動車いすのメンテナンスを皆さんはどこで頼んでいますか?手動車いすは自転車屋さんがメンテナンス業務を行っていこうと活動を広げていますが、電動車いすも見てもらえるのでしょうか? バッテリーがらみという点ではガソリンスタンド?どんな情報でも構いません。教えて下さい。

【ある臨床工学技士の方からの回答】

 バッテリーは、意外と奥が深く、難しいですよね。充電できる期間や回数は、使い方や同一種類のバッテリーでも個体差があるので、一概に何年とか何回とか言うことはできないと思います。
 浅い充放電では、過充電の危険性が高まり、バッテリーの寿命が短くなる可能性があります。逆に、深い放電をしてしまうとサルフェーションが進み、やはりバッテリーの寿命が短くなってしまいます。バッテリーを50%前後使用したら、すぐに充電をする習慣をつけると良いと思います。ただし、YAMAHAの電動車椅子のバッテリーのように、ニッカド電池を使用している場合は、使い切ってから充電しなければメモリー効果という厄介な現象が起きて、バッテリーの容量が低下してしまいます。充電器にリフレッシュ機能がついているのはそのためです。
 バッテリーのコネクターを外さずに電動車椅子をしばらく使わなかったりすると、自動車と同じようにバッテリー上がりを起こします。自己放電と待機電流の影響です。電動車椅子をしばらく使わない場合は、満充電をしてから、バッテリーのコネクターを外しておく必要があります。コネクターを外せば、待機電流が流れないので、バッテリーが上がりにくくなります。それでも、あまり長期間放っておくと、自己放電の影響でバッテリーはダメになってしまいます。したがって、電動車椅子を使用しない場合でも、月に1度は充電する習慣をつけると良いと思います。
 完全放電してしまったバッテリーは、サルフェーションの影響で内部抵抗が上昇してしまい、通常の充電器では充電することが不可能になってしまいます。バイク用のMFバッテリーの充電器には、充電初期に20Vの高い電圧をかけて、小さな電流で充電する機能がついているものがあります。このような充電器を使えば、完全放電してしまったバッテリーを充電することができるかもしれません。満充電のバッテリーを間違えて充電すると過充電になり、危険ですが…。
 あと、パルス充電器や、サルフェーションを解消するパルス発生器なる製品も市販されています。効果の程はわかりませんが…。現在、実験中です。

 重要なことを言い忘れましたが、シールドタイプのバッテリーは急速充電をすると爆発する可能性が高まります。充電時に、バッテリー内部で水の電気分解が行われ、水素と酸素が発生します。開放型のバッテリーでは、大気中に充電ガスが逃げていきますが(蒸留水補充が必要になるのはこのためです。)、密閉型のバッテリーの場合、内部で充電ガスが水に還元されます。しかし、水の電気分解の速度が増すと、内部での充電ガスの吸収が追いつかなくなり、バッテリーの内圧が上昇し、バッテリーが変形をして、最悪な場合、爆発に至ります。
 希硫酸がこぼれなかったり、蒸留水の補充が不要で、一見、便利そうに思えるシールドバッテリーですが、かなり充電には気を使わないといけません。
 ちなみに、シールドバッテリー専用の充電器がないガソリンスタンドでは、充電は不可能です。自動車バッテリーの充電器は、充電初期に大電流が流れてしまうものが多いので、シールドタイプに使用すると大変危険なのです。このことを考えると、「ガソリンスタンドで充電してもらって」というアドバイスをした業者さんは無責任と言わざるをえません。
 オートクラフトのパルス充電器なら、イマセンの純正バッテリー「シールドスター」を充電できるのではないかと思っていますが…。バッテリーの容量が35AHと大きいので、メーカーの保証対象外ですが、緊急充電用として使用可能と充電器のメーカー側も言っています。病院に転がっているバッテリーで試してみようかと思っています。

 充電器とバッテリーを接続する配線に異常があっても、充放電の妨げになって、バッテリーの寿命が短くなる可能性があるので、そのあたりにも注意が必要です。電気が流れればよいというものではありません。なぜなら、バッテリーの劣化で電気抵抗が上昇しているのか、配線の異常で電気抵抗が上昇しているのか、充電器は区別できないからです。どちらの場合もバッテリーの異常であると認識してしまいます。バッテリーへの電気の出入りがしやすい環境を作ることも重要です。電気の世界でもバリアフリーは必要なのです。

 シールドスターをオートクラフトのパルス充電器で充電してみたら、いつまでたっても充電が終わりませんでした…。これは、危険かもしれません。

 電動車椅子の充電は、5A程度の定電流で充電を開始して、充電電圧が規定電圧28.8V〜29.4Vに達した段階で、定電圧充電に切り替わり、数時間充電してから、充電を終了するタイプのものが多いと思われます。定電流充電から定電圧充電に切り替わるタイミングや、定電圧充電をする時間がバッテリーの寿命に大きく影響してくるような気がします。

 バッテリーの内部抵抗は、通常0.01Ω程度と言われているので、5Aの充電電流が流れても電圧の変化は0.05V程度しかありません。
したがって、新品のバッテリーを充電する場合、内部抵抗はほとんど問題になりません。しかし、バッテリーが劣化して内部抵抗が0.2Ω程度まで上昇したとすると、電圧の変化は1Vにもなってしまいます。2個のバッテリーを直列で使用している電動車椅子では、この影響は2倍になってしまいます。このことが、充電器の動作に大きな影響を与えます。

 バッテリーターミナルの接触不良も充電器の動作に影響を与えるので、バッテリーを交換する時には、必ずサンドペーパー等で磨いてきれいにしておく必要があります。これを怠ると、バッテリーの寿命を縮めるかもしれません。
 前のバッテリーより早くダメになってしまったという経験をしたことがある人がいるならば、ターミナルの金具の汚れが原因かもしれません。

 バッテリーの内部抵抗が上昇してくると、バッテリーの見かけ上の充電電圧が高くなってしまうため、定電流充電から定電圧充電に切り替わる時間が早まります。また、定電圧充電時にも充電電流が流れにくくなってくるため、車椅子の充電器では満充電ができない状態になってしまいます。こうなると、バッテリーの劣化原因であると言われているサルフェーションが進行しやすくなり、本来の寿命を迎える前に、バッテリーがダメになってしまいます。

 今後の電動車椅子に望むことは、定電流充電→定電圧充電の2段階充電方式ではなく、定電流充電→定電圧充電→トリクル充電の3段階充電方式にするべきだと思います。定電圧充電からトリクル充電への切り替えは、充電電流の値で決定します。こうすれば、バッテリーが本当に満充電になっているか確認できるし、頻繁に充電をしても、過充電の心配はありません。

 充電器に関しては、マイコン制御による3ステップ方式の充電器などを電動車椅子に搭載するというのは良いかもしれません。すでに、小型で安価なものも市販されているようです。

 以上は、僕自身が人工呼吸器の外部バッテリーを管理しながら、独学で学んできたことなので、間違ったことを書いてしまっている可能性もあります。

(投稿:2005年7月) 




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