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 字を書くことができない人のための遺言作成講座

柴田努(司法書士) 

 こんな事例を考えてみましょう。頸髄損傷者Aさんには妻はいますが子は無く父母は亡くなり、兄弟はAさんが障害を負ってから疎遠になっていたとします。Aさんは自分の死後、世話になったNPO法人へ100万円の寄付をし、残った財産は全て妻に相続させようと考えていました。しかし、Aさんは障害のために字を書くことができず結局、遺言書は作成しないまま亡くなってしまいました。

 この事例の場合、寄付(遺贈)が行われる保証はまったく無く、さらに問題なのは財産の相続手続の時に兄弟の同意が必要ですから、その際に兄弟側が4分の1の法定相続分の権利を主張してくるかもしれません。

 この場合、Aさんが生前に有効な遺言を作成し、その中で遺言執行者を指定しておけばAさんの遺志は問題なく実行されたでしょう。

 さて、字を書けなければ有効な遺言は不可能なのでしょうか?

 答えはNOです。確かに、遺言者がェ自分で書かなければ有効にならない自筆証書遺言というものもありますが、この自筆証書遺言は一般の方が作成できるので、法律上の要件を欠き無効になったり、紛失や隠匿の恐れがあり、また遺言者の死亡後に家庭裁判所の手続を要するなど実務家からはお勧めできないものです。

 ではお勧めは?と問われますと、それはズバリ公正証書遺言でしょう。これは証人(未成年者、推定相続人・受遺者とその配偶者および直系血族はなれません)2人と公証役場へ同行し、公証人の前で自分の意思を口述すれば公証人が適法な遺言を作成してくれるというものです。法的に間違いないものが作れますし、原本を保管してくれる、家庭裁判所の手続も不要など、自分の死後に遺された方への思いやりを持つならば遺言は公正証書がお勧めです。外出が難しい方は別途手数料がかかりますが公証人が出張してくれます。実際に作成してみようという方は、電話帳にお近くの公証役場の電話番号が掲載されていますので、公証役場にいきなり出向くのでなく、電話して必要書類を教えてもらい準備してから出かけましょう。費用は参考まで相続財産が5,000万円で約5万円程度です。これも確認のうえ参考になさってください。

(北国の頸損かわら版:2004年9月より) 




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