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山道直樹さんのレポート&コラム

 下半身はまったく動きません。 支えがないと座位はとれません。握力はゼロです。手首は少し上げることが出来ます。腕は上がります。屈曲はけっこう力がありますが伸展はゼロです。(ただ現在はモバーグ手術:上腕三頭筋再建術により伸展も可能です)肩はけっこう力があります。皮膚感覚は鎖骨の下5センチくらいから下はありません。これが私のだいたいの障害状況です。

 必要な介助は生活全般に渡りますが、食事についてはあまり介助を必要としません。器やコップは持ち手の付いた、あまり重たくないものであれば持つことが出来ます。主にフォークを使用しますが、フォークは人差指と中指に挟む感じで使用します。以前は自助具を使用していましたが、今は使っていません。手が軽く握った様に拘縮してしまっていることと、少し手首が上がることで、この動作が可能なのだと思います。整容は電動シェーバーでのひげ剃りや寝癖を直す程度のブラッシングが可能です。歯磨きはあまり上手ではありませんが可能です。ブラッシングや歯磨きは自助具を使用しています。衣服の着脱は被り物を被るところまでは可能です。


 受傷とその後の経過

 大学4年の卒業間近、自宅アパートの階段から転落して頸髄を損傷しました。大学があった近くの脳外科で受傷直後に手術を受け、治療、リハビリなどで約1年2ヶ月をここで過ごしました。当時、自分を卒業させるかどうかでは反対の意見もあったという話は後で聞きましたが、入院中のまま卒業になりました。卒業間近であったため、ほぼ必要な単位は取得していました。1〜2単位の必修科目は履修途中でしたが、復学が難しいとの判断か、出席日数や試験は何らかの配慮がされ単位取得となっていました。卒業論文は実験を終えたところでしたが、論文は友達が書いてくれていました。いつの間にかという感じですが、卒業出来て良かったと思っています。休学の扱いで復学後卒業というのは無理だったと思います。

 その後、転院し、両上肢にモバーグ手術を受けました。私は腕を伸展する上腕三頭筋が完全に麻痺していましたが、肩の三角筋の筋力は割とありましたので、この手術は私には適しているとのことで決断しました。私にはこの手術が非常に有効でした。あまり力はありませんが、前腕の空中での静止や伸展など、上肢の状態が安定し、食事や歯磨き、整容などの動作が容易になり、また平坦なところでは車いすをこぐことも可能になりました。ただ傾斜があったり抵抗の大きいところでは手動車いすでの自走は難しいです。他にも受傷時に脱臼したと思われる左手親指の第2関節を固定する手術をしました。また、泌尿器科の部分では神経因性膀胱の症状がひどかったので、その治療と膀胱瘻の手術を受けました。外科的な部分で治療をしていないのは左膝の靱帯の断裂ですが、膝を伸ばす時うまく伸びないということはあるものの、特に不便がないことや手術やリハビリの負担も大きいのでそのままにしています。

 退院後、特に障害状況の変化はありません。札幌に来るまでの約15年は両親と3人での生活でした。介助のすべてを両親に頼っていたので両親にかかる負担は大きかったと思います。


 生活環境と自己管理

 平成8年、結婚を機に札幌に住むことになりました。住宅探しには苦労しましたが、他の人の話を聞くとけっこういい条件に恵まれていると思います。探すにあたっては、1.お互いの職場に近いこと、2.交通の便が良いこと、3.私の親の札幌での生活拠点に近い、この3点が地域を考える条件でした。条件の3は、当時私が在宅勤務の形態をとっていたので日中部屋にひとりになることが多く、日中の排尿などの介助をどうするかという問題が未解決のままで、その時点では私の親にこの介助を頼っていたためです。それとは別にマンション自体(当初よりマンションへの入居を前提に探していた)の段差や、通路の幅、部屋の広さ、フローリングの状態などが問題でした。

 現在の住まいは賃貸で特に改造はしていません。部屋の段差は玄関に2センチ、寝室に5センチ、風呂場に15センチあり、これらはすべて簡単なスロープを付けることで解決出来ました。浴室内部の段差はスノコを入れて解決しました。入浴はほぼ全介助で、浴室スペースや介助の関係でシャワーチェアを使ってのシャワー浴です。不要と思われる戸(居間、洗面所、浴室、トイレ)と玄関のドアノブを外してあります。新しい部屋ではないので設備等はあまり良くありませんが、部屋の作りは広くて割と使いやすいです。駐車場が地下にあり、冬期の雪かきの作業が必要なく非常に楽です。私も車に乗るときに外へ出なくていいというのは非常に魅力です。

 妻とのふたり暮らしで、私の両親が近くに住んでいます。主な介助者は妻ですが、妻がいない場合は両親に介助を頼むことが出来るので助かっています。ヘルパー制度などは勤めの関係もあり利用していません。現在の主な生活費は私と妻の給料です。私は大学在学中の国民年金未加入期間中の受傷であったため障害基礎年金がもらえません。手当としては特別障害者手当として月に2万6千円の支給を受けています。家賃がけっこう高いので生活はそれほど楽ではありません。

 排尿は膀胱瘻で、カテーテルは日中はキャップをして排尿バック等は使用していません。飲んだ水分の量や時間を考えて尿器を使用して排尿しますが、ちょっと油断すると膀胱には800Nほど貯まってしまいますので、貯めすぎないように気をつけています。夜間は小さいポリタンクに管を繋ぎ就寝します。排便はベッド上でお腹を押してもらったり摘便をしてもらったりして、週1・2回行っています。勤めの関係で生活が不規則なため排便の習慣がうまくつけられず、便秘になることが多いです。下剤を服用していますが、同時に整腸剤を飲んだり便秘に効くお茶を飲んだりの工夫もしています。シャワーチェアに座っての排便も試みたのですが、規則的な生活が出来ずに断念しています。

 平日の生活パターンは7時に起床、8時出社(冬場は8時20分)、帰宅は7時以降で9時、10時になることも多いです。就寝も12時過ぎで、1時頃が多いと思います。起床後はずっと車いす上での生活で18時間くらいは座っています。シートはシグマックス・プロテイード(厚さ50@のウレタンクッション)の上にダンロップのエアークッション(厚さ20@のビニールマット)を置き使用しています。自分には現在これが適しているように思いますが、これが絶対にいいとは思いません。何度か替えてみようと思い、業者にすすめられたものを使ってみたのですが、シートの厚さを車いすに合わせなくてはいけないことや、座位が安定してとれなかったりで、現状で落ち着いています。シートの厚さにも関係あるのですが、背もたれの高さも重要で、現在は肩胛骨の下部より下10センチくらいの位置です。これ以上低いと座位がとれません。もう少し高くてもいいかと思っていますが、あまり高いと肘の可動が制限されるので困ります。

 褥瘡については、受傷後10年目の平成4年に悪化させ手術をしました。ほぼ1年近くの入院・通院生活で、辛い1年でした。この時の手術で、左側の尾てい骨の先端を削りました。削ったことが幸いしているのか、悪化して手術した側はその後の経過が良く、再発などはしていません。現在は仕事や生活環境のこともあり、褥瘡にはあまり気を遣っていませんが、幸い長時間の車いす上での座位にもかかわらず、その後はひどい褥瘡などにはなっていません。ただ、夏場は汗をかくためか危険で、ときどき皮が擦り傷状態になるので、このような場合は近くの皮膚科へ早めに行くようにしています。

 膀胱瘻のカテーテル交換のため、月に一度泌尿器科へ行っています。すぐ近くに病院があり、札幌へ引っ越してからしばらくはそこへ行っていたのですが、処置方法などがあまり良くなかったので、現在は以前通っていた病院まで行っています。入院当時より膀胱に結石が出来ることが多く、二度結石をとるために入院しました。年に一度腎臓機能と結石の検査をしますが、ここ4年程は結石もなく良好な状態です。抗生剤のクラビットを不定期に飲んで感染を予防しています。

 札幌に来てから不規則な生活と外食が多くなったなど食事の内容が変わったこと、水分の摂取量が減ったことが主な原因だと思いますが、痛風になってしまいました。症状はむくんだように指や足が腫れ、本当はすごく痛いそうなのですが、幸か不幸か感覚がないので痛みはありません。痛風は一度なってしまうとずっと薬を飲み続けなくてはいけないのですが、良くなると薬を飲むことを忘れてしまい、また発作を再発してしまいます。尿酸値は痛風になる境界値くらいでそれほど高くはないのですが、腎臓機能への影響が怖いので気を付けなくてはと思います。尿酸値を下げるザイロリックを不定期で飲んでいます。

 車いすに座っている時間が長く、コンピューターに向かう時間も長いため、肩こりや背中のコリ、重みのようなものを常に感じています。風邪などで体調を崩した後などにひどい偏頭痛を起こすことがあります。一度発作が起きると、2週間から1ヶ月くらい発作が起きる状態になり、非常に体調が悪く、安静にして鎮痛剤を飲むしかないので、体調を崩さないことと肩や背中のコリをひどくしないようにしています。 

(北海道頸髄損傷者連絡会レポート集・1999年)




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