1999年しし座流星群観測記
11月12日(金)から、グリズムでスペクトル写真を撮影するための機材の準備に取りかかりました。
グリズムをカメラに取り付けるための、ステップアップリング・フイルムとモノクロ写真現像キット・
フリーストップ自由雲台などの購入です。
FRO(FM放送を利用した電波観測)装置の最終動作確認も、忘れてはならない大切な仕事でした。
ところが、肝心のグリズムが届きません。
仕事が忙しかったため、旭川から帯広に直行することもあると考え、旭川へ送っていただくように連絡
をしてありました。
幸い、仕事に目途がついたので、送り先を札幌の自宅へ変更するようにメールを入れたのです。
しかし、14日になっても届きません。
送り主の海老塚さんはハワイの観測所へ出発してしまい連絡がつきません。
同じ広域分光観測ネットの杉本さんにメールで問い合わせたところ、配達は宅急便でなく郵便とわかりました。
郵便局に問い合わせると、旭川で受け取り主不在のため、局預かりになっていました。
15日は、往復6時間かけて旭川まで行って来ました。
翌16日は息子と二人で、十勝への旅立ち。
ところが、16日夜はあまり流れず、17日夜も25時以降は4-5個の星しか見えない曇り空でした。
18日の19時のNHKニュースで、ヨーロッパで大出現の報道を見て肩を落としてしまいました。
しかし、その夜は諦めずに観測に勤しみ、ZHR数百の出現に巡り合うことが出来ました。
短痕が残る流星は多数ありましたが、永続痕は1個も出現せず、一度も分光写真用のシャッター
を切るチャンスがありませんでした。
分光観測スタンバイの様子
やむなく、途中から眼視観測に切り替えてしまいました。
息子は眼視計数観測の他に写真撮影を行い、3個のしし座流星をとらえました。
輻射点近くを流れる「しし座流星」
1999年11月19日 26:21ころ
フジHG1600 アサヒペンタックスSP 55mm F2(トリミング)
撮影:柴田雅彦
当夜のコンディション
透明度は良かったが、雲が沸いたり流れてきた
左が北斗七星 正面下が「しし座」
一方、自宅のFROは18日11時ころに飽和状態に陥っていました。
しかし、それはそれで観測記録となって残りました。
23日旭川へ戻りましたが、1,5360kmを走った11日間でした。
1999年しし座流星群のFRO
(FM放送を利用した電波観測)による観測
第1図に11月18日2時から19日23時までのHRを示す。
ピークは、通常の10倍程度を示しているJST10時代(UT 2H)の104となっている。
第2図の10分単位で見ると、11:00〜11:10には29個のエコーを受信している。
流星群はピークを示した後、急激に減少しているは、輻射点が13時ころ没するためである。
第3図および第4図に示したように、バックグラウンドの電波が11時および12時頃に上昇している。
1998年にもあったように、流星痕からエコーが連続して受信されていたと推定される。
この現象は以下の時間に発生している。
10:53ころ、11:19〜11:47、12:09ころ、13:08ころ、13:24ころ。
日本で肉眼観測された18日夜の第二極大は、輻射点が昇る23時から増加し、3時代前半に最大となっている。
主ピークとの違いは、増減を繰り返しながら、緩やかに減少している。
FRO観測装置の仕様
観測地:札幌市清田区 λ=42.983°Φ=141.783°
ANT:5素子 地上高13m 仰角90°方向(指向面)=南南西(概ね放送局)
受信機:UFR−40G(三共特殊無線)2台
放送局:80.7MHz(NHK千葉、FM愛知、FM福岡ほか)
観測方法:パソコンによるノイズキャンセラー、サンプルタイム=30(msec)
観測に使用しているFMアンテナ
第1図 11月18-19日のHR(1時間間隔)
第2図 11月18日のHR(10分間隔)
第3図 11月18-19日のバックグラウンド(1時間間隔)
第4図 11月18日のバックグラウンド(10分間隔)