翌月へ
就業日誌
平成12年10月14日(土)
- 敗北記念ラブコメ小説『気まぐれネゲット★ロード』予告編
私は、彼の卑劣な行為に憤慨していた。
なんということをしてくれたのだろうか。許せない。あれほどのことをされて、許すことができる者は人間ではない。
今の私を支配している感情は怒りであった。
私は自分の握力の限界まで拳を固く握り締め、彼の住むアパートまでの道程を全力で疾走していた。事の起こりは、1ヶ月前だった。
それは輝かしい未来への幕開けのような出来事だと、当時の私には思われた。
私はネットの出会い系ページでメールフレンドとして、女性と知り合うことができたのだ。
よもやトラップではないかという疑いも何のその、私は直ちにまだ見ぬ彼女の虜になり、メールを読みメールを返信するという行為に人生の至福を見出したのだった。
彼女とのメールをやり取りするうちに私の中に「会いたい」という欲求が高まっていくのも、ファンの壊れたパソコンが高熱を発するのと同じぐらいに当然のことであった。例えその想いが暴走するようなことがあったとしても、誰に咎めることなどできるというのか。
まだ見ぬ彼女の姿が私を期待と不安で翻弄し、それに耐えられなくなった私が「週末はどうですかハアハア」と返信するのも至極当然のことであろう。
しかしそのメールが腕の立つハッカーである悪友に盗み見られていたことなど、誰に想像できただろうか。突然彼女からのメールが途絶えたことに私が懸念していると、その悪友からメールが送られてきた。
メールには、「最後までイかせてもらいました(笑)」と書かれていた。
あの男は、私の名を語って彼女に会い、散々彼女で楽しんだ挙句、私を愚弄するメールを送ってよこしたのだ。
メールを読み終えた瞬間私の肉体は激情に支配され、振り下ろした拳が手近にあったキーボードを粉砕した。怒りが、私の肉体を加速させていた。
全力疾走などここ数年したこともなかった私が、激情に身を任せて彼のアパートへ向かって走っているのだ。
あの男だけは許さない。絶対に。
私は、あのような友人しか作ってこなかった自分の人生を悔いた。やはり、友は選ぶべきだったのだ。
しかし、そのことを今更悩んでいても仕方がない。
裏切られたのならば、決着はつけなくてはならない。
奴には、肉体的制裁をもって私の憎しみを受け止めてもらわなくてはならないのだ。奴のアパートが、目前に見えた。最後の十字路を越えれば、そこに私の恨みを晴らすべき相手がいるのだ。
そのことを思うと、私の肉体は意思と合致してさらに加速した。
そして全力で十字路に飛び出した瞬間、私は突然、鈍い衝撃を感じた。私は、宙を舞っていた。
瞬間私の脳裏に、転校初日の遅刻を恐れてパンをくわえたままバタバタと走っている少女の姿が思い起こされた。
ああ、そうか。そういうことだったのか。
神は、悪友に女をかすめ取られた私を哀れんで、このような出会いを用意してくれたのだ。
やけに滞空時間が長いことが気になるが、これはおそらく神が私と少女の出会いを祝福して時間にスローモーションをかけてくれているのだ。
私の中から、ドス黒い憎しみの感情が消え失せていくのがわかった。もう、誰も憎む必要はない。今となっては、この出会いを導いてくれたあの悪友に、感謝すらしなくてはならないのだ。
だんだん、地面が迫ってきた。私はこの後しりもちをついて、「いてて」と言いながら少女を見やり、赤面しなくてはならない。
さあ、少女よ、私に、君のくまさんパンツを拝ませておくれ。私が最期に聞いたのはダンプカーのブレーキ音と、自分の骨が砕けた音だった。
※本編の内容は、予告編とは大きく異なる場合があります。ご了承ください。
平成12年10月28日(土)
- 皆様お久しぶりでございます。当ボイラー室の管理者、機械科ボイラーズです。
北海道ではすでに初雪が降り、身も心も寒くなりつつあるこの季節、皆様はどのようにお過ごしでしょうか。
私はというと最近すっかり更新のサボリ癖がついてしまい、この日記も日記だというのに2週間ぶりの更新となるわけですが(しかも2週間前のは小説だし)、別に更新停止の言い訳にありがちな、私生活が忙しくなったとかそんなことは全くありません。
むしろ毎日毎日暇を持て余して、ダラダラと過ごしています。
一応仕事にはちゃんと行っていますがほとんど定時で帰っていますし、夕方6時から寝るまでは全くのフリーなので、まっとうな社会人としては自由な時間はかなり多いほうなのではないかと思っています。
というか、あまりにも私の人生には何も起こらないので、なぜ皆そんなに忙しぶっているのか疑問に思えて仕方がありません。
もしかしたら本当は皆けっこう毎日ダラダラしているのに、私に自責の念を味わわせるために皆が共謀して私を陥れようとしているのではないかという被害妄想に駆られています。
というわけで、私は個人的に「私をして『忙しい』と言わしめる劇的なイベント」のアイデアを募集します。
何か一人でできそうで、しかも他人から忙しい人だなあと見られてしまうような画期的なアイデアをお持ちの方は、ぜひとも私にご一報ください。え? 小説の続き書け? 何を言っているんですか、そんなのは暇人のやることです。