6.ツーソンからフラグスタッフへ

 観測終了後、仮眠して13時にホテルを立ち、インターステイト10号でフラグスタッフへ向かった。延長405km、標高八百メートルから二千メートルの高速道路の旅である。日本の道路と違うのは、都市部以外は中央分離帯など障害物はなく、対向車線は50mくらい離れているから走りやすい。また、無茶な運転で追い越していく車は1台もない。ただ、区間によっては、バーストしたタイヤが路外に放置されたままになっていて醜かった。制限速度は道路状況により頻繁に変わる。標識を見て運転していたが、最高のスピードが何マイルかは記憶にない。マイルを1.6倍して150km/H 位だったような気がする。

前夜の疲れがあり、休みながら行ったのでフラグスタッフまで5時間かかった。高速からの出口が分からず遠回りをしたが、聞きながら目的のホテル「comfort inn 」に到着。高級なホテルだが、オフシーズンの割引があって1人1泊3,800円。朝食のパンは特別に美味しかった。観光のオフシーズンなので、どこのホテルも安くて良かったが、ここが最高であった。

ホテルは全てインターネットでの予約しておいたので、最終確認のEメールが毎日のように入ってきた。予想到着時間とレンタカーで行く旨を返信しておくと、ホテルまで確実に伝達された。
          Interstate 40号線(フラグスタッフ〜メテオクレーター)
     中央分離帯はなく、上り・下りの2本の道路(2車線)がある。 Uターン禁止
 

7.ガソリンの給油

 アメリカはセルフ給油が主流だ。経験が無かったので、自宅近くのセルフガソリンスタンドへいって練習してきた。現地では、クレジットカードの読み込まれ方の判断がつかなくて、ギブアップ。店に行ってガソリンが出ないと言うと、ポンプナンバーと現金かクレジットカードかと聞かれたので、クレジットカードを預けるとカウンターにあるレジを操作して「OK」と言われる。ポンプへ戻ってハンドルを握ってみると給油が開始された。満タン後、店のカウンターでサインをして、カードを受け取って精算終了。なお、単価は、1リッター45円だったのだが、現地では、米ガロン(1ガロン=3.79リットル)で給油なのでなので判らなかった。
 

8.ローウェル天文台

 フラグスタッフのホテルを出ると伝説の「ルート66」である。変則交差点を左方向へ進むと小高い山へ向かう。標高は2,380m。火星の運河説と冥王星の存在を計算から予見したパーシバル・ローウェルが建設したローウェル天文台である。有名な天文台がダウンタウンから1.6kmの距離にあるとは想像していたよりも近かった。

ビジターセンターの前に立つと開館時間(Noon-5PM Nov-Mar)と入場料(Adults $4.00)の表示があったので立ち止まって見ていると、ドアが開き中に入るようにセンターの男性職員に促された。言われるままに入って入場料を払う。しかし、ガイドツアーは1時間後の13時だからと念を押される。構内を一巡して戻ってくると、女性が望遠鏡を出してなにやら見ている。テレビューの10cm屈折で、プロミネンスを見せていたのだ。今日は大きいのが出ているとのことで覗いてみると、真っ赤な太陽の下にはっきりとプロミネンスが確認できた。せっかくなので、コリメート法でパチリ。デジカメは便利である。

中に戻ると、先ほどの職員が話しかけてくる。どこから来たか・年は幾つか・これから何処へ行くなど決まり文句ではあったが、この後の行程を話すと、観光名所を教えるから地図を持ってこいとのこと。グランドキャニオンはリパンポイントがお薦めで、サンセットクレーター(火山)やWupatki(ウパツキ) National Monument(インディアンの遺跡)などを経由していく道を行くこと。モニュメントバレーに行く途中には、断層がむき出しになって長く続いているいる場所(Hamblin Wash)があるので足を延ばした方が良いこと。インディアンが住んでいたNabajo(ナバホ) Natinal Monumentも寄ってみることなど、ガイドツアーが始まるまでの時間を使って、オプションで観光案内をしていただいた。
 
 
      ローウェル天文台ドーム 


         思いがけずプロミネンスを観測
            手持ちのデジカメで撮影
 
         Universeについてのレクチャー
        招き入れてで観光案内もしてくれた職員

       24インチAlvan Clark 望遠鏡  
         夜間公開で覗くことが出来る                        

              構内をツアーするメンバー
              惑星(地球?)の看板前にて
            

                 冥王星を発見した 
              Lawrence 13インチ写真鏡 
 
             冥王星発見に使用された実物の
                  コンパレーター
 
 さて、13時になるとガイドツアーが始まる。まず、レクチャールームで宇宙についての解説がある。説明者はこの職員で、液晶プロジェクターで投影しながらの話は、写真が綺麗で、英語の分からない次女もそれなりに理解出来たらしい。次に、プロミネンスを見せくれた女性(MARIEさん)の案内でツアー。ローウェルが火星を観測した24インチAlvan Clark 屈折望遠鏡の見学にはいる。望遠鏡は往時のままでであり、夜間を含む一般公開専用に用いられている。ドームは木製で、回転部分には車のタイヤが使われていた。木製であることは、後で見学する冥王星発見に使用されたLawrenceドームも同様であった。Lawrenceはパーシバル家の最年少の弟で、このドームと13インチ写真鏡を贈った人である。トンボーはこの望遠鏡で1930年冥王星を発見している。発見時の乾板とコンパレーターが別棟の展示館にあり、発見の様子を知ることができる。

ビジターセンター前を太陽、Lawrenceドームを冥王星に見立てて、惑星の名前と説明を記した看板が立てられている。太陽系の大きさや配置を実感できて面白かった。

ローウェルと日本のかかわりは、ドームの前に、1980年石川県穴水町の使節団が91年目にフラグスタッフを訪れ、交流を深めたことが記されていた。
 

9.メテオクレーター

 14:30、ガイドツアーを終えてメテオクレーターに出かける。高速で片道50kmと近い。高速と書いたが、日本と違って無料の高速道路(Interstate)しかないのだ。走行中からクレーターのリムが見え出す。高速を降りてからは、ペンペン草のような乾燥地特有の植物がまばらに生えている赤茶けた大地を6km走る。クレーターは大平原に横たわる特別な存在に見えて、良い場所に落ちてくれたと思う。だが、近づくと人造のミュージアムがリムにへばりついていて、景観をを損ねている。ミュージアムからクレーターの中へ入ると火口の形は整って静まりかえっている。周囲160kmの動植物を一瞬に死滅させた、隕石の衝突は想像できない。旭岳や十勝岳のように、激しく蒸気を吹き上げる生きた活動の方に迫力を感じる。訪問記念の土産は、クレーターの底から掘り出した土を買った。
                     大平原に横たわるメテオクレーター
             観光客は少なく、静まりかえっていたメテオクレーター
 

10.サンセットクレーターとインディアンの遺跡

 ローウェル天文台で教えられたルートを走って、グランドキャニオンに向かう。途中、Sunset Crater Volcanoビジターセンターで、国立公園共通パスを購入する。アメリカ国内で1年間有効で、50ドルである。これでどこの国立公園にも無料で入られたが、必ずパスポートの提示を求められた。

国立公園共通パス 50ドルで全ての国立公園へ入られる 1年間有効
サンセットクレーターはただの火山であった。1,064年に噴火した時の溶岩流が道路から見える。この一帯は周囲に較べて雨が多いらしく樹木は多いが、950年も経っているのに円錐形の山肌は真っ黒であった。なお、メテオクレーターで買った地下の土には、ここの火山灰が混ざっていると説明書に書かれていた。
 
1,064年に噴火したサンセットクレーター 

Sunset Craterを越えると道は緩やかな下りとなり、眺望が開けた。樹木の背は低くなり乾燥している。正面30kmには、高さ130mの段丘が50km以上に亘って延びている。青い空と絹雲、地平線の向こうまで続く乾燥した大地。アメリカらしい、雄大な風景の一つであった。だが、何もない大地にWupatki(ウパツキ) National Monumentがあった。800年以上昔、農業をしていたアメリカインディアンの集落である。Wukoki pueblo(ウコキ プエブロ)は煉瓦造りの住居で、当時のインディアン(ポピー族)の生活の一部が窺えた。      

 煉瓦造のインディアン住居 Wukoki pueblo


11.グランドキャニオン

 Sunset Craterを越えた峠から見えた段丘がグランドキャニオンかと思いきや、道路は大きく左にカーブして元の89号線に戻った。草木が乏しい荒涼とした高原を1時間ほど走り、左折するとグランドキャニオンだ。まず現れたのが、インディアンの出店だ。オフシーズンなので3件ほどしか開いていないが、ピーク時は20件ほどが軒を連ねていたようで、屋台だけがおいてある。店の裏はリトルコロラド川が大地を削り始めていて、公園には入っていないが、リトルキャニオンとでも言った感じである。

公園内イーストリムの各ビューポイントでの眺望が雄大であったことは言うまでもない。深さ1500mの峡谷はもちろん、向こう16kmから地平線まで続く大地に点在する「メサ」と呼ばれる台地が続く。数百万年前から削られた峡谷の最下層は20億年前の地層で化石が出土し、500万年前に現れた日本列島とは比較にならない大きな時間スケールだ。
グランドキャニオン渓谷は450km続いているが、公園の東側入り口からインフォメーションプラザまでまでは直線で30kmある。ビューポイントは10箇所以上あるので、訪れる人は時間の余裕を持った計画をお薦めする。
 
    デザートビューから望むグランドキャニオン国立公園


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