3.チューンナップ&ワクシング・テクニック


(1)グライドゾーンの工程

b.チューンナップ工程

[説 明]
 スキー購入時、あるいはシーズン前に、「滑走面の平坦化、酸化層除去、細かい筋状の溝切り、さらに滑走面の酸化防止・ワックス浸透のしやすい下地作り」を行うのが、チューンナップ工程です。
 
クラシカルスキー(または歩くスキー)についてもグリップゾーンにホットワクシングを行わない以外は、スケーティング・クラシカルスキー(歩くスキー)に共通の工程です。

工     程
概          要
備   考
1. スクレーピング・ブラッシング  滑走面チューンナップの準備です。
 新品のスキーの場合は滑走面の保護ワックスを、2シーズン目以降のスキーの場合は昨シーズンの終わりに滑走面の酸化防止を目的に塗ったワックスを、スクレーパーシャープナーやサンドペーパーなどで、直角に目立てしたアクリル製のプレキシスクレーパーで、滑走面のワックスをトップからテールに向かい、削り取っていきます。力を入れすぎると滑走面を痛めてしまうので、適度の力で何度かに分け、徐々に削り取っていきます。
 サイドにたれているワックスは、マルチスクレーパーで、溝を埋めているワックスは、グルーブスクレーパーあるいはマルチスクレーパーで削り取ります。
 次にブロンズブラシで滑走面のトップからテールに向かい、滑走面の細かな筋を埋めているワックスを掻き出します。次にコルクなどに巻き付けたファイバーテックス(粗)でトップからテールに向かい、滑走面の毛羽取りを行います。

・プレキシスクレーパーには、たわみの少ない厚めのものが良いです。
・削り取ったワックスに黒いカスが混らない程度にスクレーピングします。
・グルーブスクレーパーを使う時は、溝からはずれて滑走面にキズをつけてしまうことがあります。注意しください。
・滑走面の細かな筋の中に埋もれているが掻き出されると、くすんでいた滑走面に光沢が出てきます。
・ファイバーテックスには研磨剤の入ったものと入っていないものがあります。ここでは、研磨剤入りのものを使います。
1'. ストラクチャー加工
(ショップ依頼工程)
 ストラクチャーとは、コンピューター制御されたストーンマシンで、滑走面の縦方向に入れられた細かい筋のことです。膜状の水分が滑走面上を覆ってしまうと、滑降面は雪面との間で吸着現象を起こしてしまい、滑走性が低下してしまいます。滑走面の水分のはけ具合を調整し、スキーの滑走性を上げるのが、ストラクチャーの役割です。
 水分の発生しづらい低温低湿度の雪に対して、深く、大き過ぎるストラクチャーもまた、滑走抵抗となりますので、スキーの滑走性は低下します。同じストラクチャーでもメーカ(スキー)毎に、滑走面の特性が異なるので滑走抵抗の程度は違ってきます。
 要はメーカ(スキー)毎、雪質毎に適切なストラクチャーがあるということです。滑走する地域の雪質を大体カバーし、メーカ(スキー)毎に適合したストラクチャーを入れてもらうよう、ショップに依頼することをお薦めします。
 またストラクチャー加工を施すことで、滑走面は酸化や傷に対しリフレッシュされます。ストラクチャー加工のタイミングは、スキー購入時、あるいはシーズン終了後が良いと思います。、
・ストラクチャーの適用範囲を越えた雪質の場合は、スーパーリラーなどを用いて手作業で、筋切りを行います。特に大きめのを入れる時は、レースのスタート前に行います。また、ストラクチャーはストーンマシンで滑走面を擦り削るように筋切りしているのに対し、リラーはネジ状の金属で滑走面を押し当てて筋を作っているだけなので、ワクシング・スクレーピング・ブラッシングを繰り返していると時間とともに元に戻ります。
・ストラクチャー加工の前後で、ショップではどんな工程を施しているのか、次工程との関係から確認しておきましょう。
2. フラットチェック  スチールスクレーパーなどで、滑走面をゆっくりなぞるように滑走面との間に隙間がないか平坦性をチェックします。
 滑走面が平坦でない場合は、サンドペーパー(#100)をコルクなどに巻き付け、トップからテールに向かい、滑走面の平坦性を確認しながらサンディングします。次にトップからテールに向かいプレキシスクレーパー、ブロンズブラシ、コルクなどに巻き付けたファイバーテックス(粗)の順に使い、滑走面の毛羽取りを行います。引き続き、サンディング(#150)後、スクレーピング・ブロンズブラシ・ファイバーテックス(粗)で再度、滑走面の毛羽取りを行い、サンディング(#180)で仕上げます。
・ストラクチャー加工したスキーの滑走面は基本的に平坦に仕上がっているはずですが、念のため平坦性を確認します。
・当然、完全に平坦な滑走面がベストです。中央部がエッジ部より僅かに高い凸はまだ良いのですが、コーンケーブ(両端エッジ部が高く中央部がへこんでいる状態)だけは、解消して下さい。
・スクレーピング時に、削れた黒いカスが毛羽です。
3.サンディング・スクレーピング・ブラシッシング  滑走面の酸化層除去の仕上げの工程です。2で平坦処理をした場合は、すでに酸化層は除去されていますが、滑走面チューンナップの仕上げとして、この工程を行ってください。
 ストラクチャー加工した場合は、直角に目立てしたアクリル製のプレキシスクレーパー、ブロンズブラシ、ファイバーテックス(粗)→(細)の順に、トップからテールに向かい滑走面の毛羽取りを行います。
 ストラクチャー加工していない新品のスキーの場合、サンドペーパー(#180)をコルクなどに巻き付け、トップからテールに向かい数回サンディングします。次に直角に目立てしたアクリル製のプレキシスクレーパー、ブロンズブラシ、ファイバーテックス(粗)→(細)の順に、トップからテールに向かい滑走面の毛羽取りを行います。次にサンドペーパーを#320に替え、スクレーピング後、ブロンズブラシ→ファイバーテックス(粗→細)を使います。
 2シーズン目以降のスキーに対しては、サンドペーパー(#320)をコルクなどに巻き付け、トップからテールに向かい数回サンディングします。次に直角に目立てしたアクリル製のプレキシスクレーパー、ブロンズブラシ、ファイバーテックス(粗)→(細)の順に、トップからテールに向かい滑走面の毛羽取りを行います。
 引き続き、トップおよびテールからそれぞれ30〜40cmのエッジ部に対し、サンドペーパー(#320)をコルクなどに巻き付け、45度程度の角度で少しずつ、雪面との抵抗とならないようにエッジをこすり落とし、コルクなどに巻き付けたファイバーテックス(粗)→(細)で仕上げます。
・グライドゾーンが酸化すると、ワックスが浸透しづらくなり、滑走性が低下します。手入れされたスキーでは、浸透しているワックスのしみ出しで、滑走性を高めています。
・酸化した部分は、白っぽく、スクレーピング時にひっかかりやすくなります。酸化しやすい箇所は、トップとテール部の両サイドと、クラシカルスキーのグライドゾーンとキックゾーンの境界付近です。
・グリップゾーンは酸化しても構いません。
・スケーティングスキーのセンター部は雪面でのスリップ防止のため、エッジを残しておいた方が良いそうです。
4. ホットワクシング  1番柔らかい(低融点)純パラフィン(ハイドロカーボン)系のグライドワックス(TOKOならワールドロペット・イエロー、SWIXならCH10)が煙を立てることなく、スムーズに溶ける温度にアイロンを暖めます。ワックスをアイロンに押し当て、溶けだしたワックスを滑走面の溝を挟み、両サイドに滴らせます。
 次に、アイロンを滑走面に押し当て、
ワックスを液状に溶かし、均等に伸ばしていきます。このときアイロンを一カ所で止めたり、局所的に熱がこもってしまうことのないように(特にトップ、テール部の厚みの薄いところ)、滑走面(=グライドゾーン)全体がワックスで覆われるように、アイロンを動かします。
 ストラクチャー加工やサーモバッグをショップ依頼すると、このホットワクシングも一連の作業としてショップで処理してくれます。
 ワックスが白く固まる前に、滑走面からサイドにたれたワックスは、マルチスクレーパーで、溝を埋めているワックスはグルーブスクレーパーあるいはマルチスクレーパーで削り取ります。
・滑走面の融点は約130℃とのことです。滑走面がこの温度に達することのないよう、細心の注意が必要です。
・アイロンで滑走面を加熱すると、滑走面の組織に隙間ができ、ワックスが浸透しだします。
・アイロンの角を、滑走面上で滑らせるようにすると、滑走面にワックスを垂らしやすいようです。
4'. サーモバッグ
(ショップ依頼工程)
 「滑るスキー」を作るには、滑走面にワックスを十分浸透させる必要があります。純パラフィン系ワックス(低融点ワックス)のホットワクシングに続いて、サーモバッグ(約60℃)の中で数時間放置すると、滑走面深くまで、多くのワックスが浸透するとのことです。より多くのワックス(低→中・高融点)を浸透させる次工程「初期のベースワックス処理」の下準備として、サーモバッグ処理をショップに依頼することをお薦めします。
・サーモバッグ処理の前後で、ショップではどんな工程を施しているのか、次工程との関係から確認しておきましょう。


(2005年 1月 29日 (土)更新)
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