3.チューンナップ&ワクシング・テクニック


(1)グライドゾーンの工程

e.レースワックス工程

[説 明]
 いよいよ滑走面最表面のワクシングです。手を抜かずに仕上げましょう。

工     程
概          要
備   考
13. ホットワクシング  選択したレースワックスが煙を立てることなく、スムーズに溶ける温度にアイロンを暖めます。ワックスをアイロンに押し当て、溶けだしたワックスを滑走面の溝を挟み、両サイドに滴らせます。
 滑走面にアイロンを押し当て、
ワックスを液状に溶かし、均等に伸ばしていきます。このときアイロンを一カ所で止めたり、局所的に熱がこもってしまうことのないように(特にトップ、テール部の厚みの薄いところ)、アイロを動かします。
 フッ素含有の高価なワックスは、融点よりわずかに低い温度にしたアイロンにワックスを触れ、柔らかくして、滑走面に厚めに生塗りをします。次にワックスが煙を出さずにスムーズに溶ける温度したアイロンで均等に伸ばす方が、ワックスを有効に使えるようです。
 ワックスが白く固まる前に、サイドにたれたワックスはマルチスクレーパーで、溝のワックスはマルチスクレーパーやグルーブスクレーパーで削り取ります。
 滑走面のスクレーピングは、ホットワクシング後室温で1時間以上冷やしてから行います。
・滑走面の融点は約130℃とのことです。滑走面がこの温度に達することのないよう、細心の注意が必要です。
・アイロンで滑走面を加熱すると、滑走面の組織に隙間ができ、ワックスが浸透しだします。
・アイロンの角を、滑走面上で滑らせるようにすると、滑走面にワックスを垂らしやすいようです。

・レースワックスの選択については、ベースワックスと併せ、「グライドワックスの選択」で解説します。
14. スクレーピング  スクレーパーシャープナーやサンドペーパーなどで、直角に目立てをしておいたアクリル製のプレキシスクレーパーで、滑走面のワックスをトップからテールに向かい、削り取っていきます。力を入れすぎると滑走面を痛めてしまうので、適度の力で何度かに分け、徐々に削り取っていきます。
 ワックスが固まる前に、サイドにたれたワックスはマルチスクレーパーで、溝のワックスはグルーブスクレーパーあるいはマルチスクレーパーで削り取ります。
・プレキシスクレーパーには、たわみの少ない厚めのものが良いです。
・薄くワックスが残っている程度(7、8割程度のワックスを削り取る)のスクレーピングで良いと思います。削り取ったワックスに黒い削りカスが混じっているようであれば、それは滑走面を削っています(滑走面が黒色の場合)。
15. ブラッシング  ボアブラシ(ミックスブラシ)を使い、トップからテールに向かい滑走面、ストラクチャー内部に残ったワックスを掻き出します。滑走面に光沢がでるまでブラッシングしてください。
 続いて、ナイロンブラシ馬毛ナイロンポリッシュの順に、トップからテールに向かい数回ずつブラッシングします。
・滑走面にワックスが残っていると、そこは光の加減でくすんだ感じに見えます。色々と角度を変え、滑走面を観察してみてください。すぐに違いがわかるようになります。
・(SWIXの場合)ミックスブラシ(ボアブラシ)→ナイロンブラシ→馬毛ブラシ→ナイロンポリッシュの順にストラクチャー内のより細部までワックスを掻き出すイメージです。
16. 拭き取り  研磨剤の入っていないファイバーテックス(ポリッシュ)ファイバーレーンで滑走面に残ったワックスの粉やゴミをふき取り、仕上げます。
 
17. 純フッ素ワックス処理  以上の工程をしっかりこなせば、レースでも十分対応できると思います。
 長時間の滑走、汚れた雪面での滑走、湿雪・ザラメ雪・アイスバーンでの滑走の際には、撥水性、耐摩耗性に非常に優れた純フッ素(フルオールカーボン)ワックスを用いると、滑走性を一層向上させることができます。しかしこのワックスは、非常に高価です。ですから、個人の力量、投資効果を考えて、省略しても構いません。以下は、SWIXセーラF(パウダー)処理の手順です。
1)まんべんなく付着させる工程
・雪面に適したセーラFを、滑走面に振りかける。
・グルーブ(溝)の左右別々にアイロンを一秒弱づつ、軽く押し当てていく(通常のアイロンがけとは違い、アイロンを滑らせない)。
・ナイロンブラシで、ならすようにブラッシング。
・トップからテールに向かい50cm/秒程度の速さで、アイロンがけする。
・スキーが冷えてから、プレキシスクレーパーで軽くスクレーピング後、ナチュラルコルク→フェルトを順に用いて伸ばし、滑走面になじませる。
2)セーラFの膜面以外を除去する工程
・ナイロンブラシ→馬毛→ナイロンポリッシュの順に、セーラFの膜面だけを残すように、必要のないワックスを掻き出した後、ファイバーレーンで拭き取り、仕上げます。
・アイロン温度が、高温(150℃)にする必要があります。滑走面を焦がすことのないよう注意してください。
・ワックスが必要以上の高温になると、化学変化が起こります。アイロンの温度管理に注意するとともに、換気環境下で作業することを心がけましょう。

・ブラシは、他のワックスによる汚染(コンタミネーション)を避けるため、セーラF専用としましょう。

・滑走面に膜以外で、ワックスが残っていると、滑走性が損なわれることがあるそうです。きれいにブラシで取り除きます。
18. 静電防止 ・最後に静電気除去クロスで滑走面を仕上げると、細かいゴミが滑走面に吸い付きづらいとのことです。 ・レーススタート前にリラーを入れた場合は、ナイロンポリッシュブラシ、ファイバーテックス(ポリッシュ)、ファイバーレーン、静電気除去クロスを順にかけます。


(2005年 1月 29日 (土)更新)
「BACK」はブラウザの履歴で戻ります。