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第二十回  レッド・セミナー#4 死角

 私は嫌な夢を見ていた。目を覚ますと、誰かが無理矢理私にVB をやらせようとするのだ。それが現実の続きであることに気付き、 私は愕然となった。

 何故こんなことになってしまったのだろうか。私は懸命に記憶の 糸を手繰りよせた。だが、思い出されたことは苦痛そのものだった。

「やはりあそこに行かれるのですね」

 唐突に私の前に現れたシンパが、声を掛けてきた。最後に会った のは昨日だったが、幾分生気を取り戻した顔をしていた。

「…何故、君がここにいる」
「……やはり……あの同好会のところへ行くつもりですね」

 同好会…VB同好会。かつて私が取材に赴いたときに戦慄させら れた、存在そのものが奇怪としか言い様が無い、しかしある高校内 に確実に存在する同好会である。ちなみに、この同好会の所在を明 らかにしてくれたのは、シンパである彼である。

「彼らは危険です。実は先日私が30円で購入したVB…あれには彼 らの手によって改造が施されていたのですよ。恐るべきことに、特 定のゲームでダメージを受けると、こめかみに電気ショックが走る ようになっていたのです」

 シンパは私と並んで歩きながら、恐るべき事実を語り始めた。

「外見は普通のVBとほとんど変わりありません。どこでどうなっ たか、中古市場に出回ってしまったようですが…。彼らは、私から それを取り戻そうとしていました。おかげで、酷い目に遭いました が…」

 シンパは語り終えると、深くため息をついた。まるで一度に数年 分は年をとったような疲労感が感じられる。

「話をしてくれたことには礼を言うが…これで君はさらに酷い目に 遭わされるかもしれんぞ」
「心配ありません。さらに酷い目に遭わされるのはあなたですから」

 何っ!? 言葉を発する暇もなく、突然後頭部を襲った衝撃が私 の意識を奪い去った。

 頭が重い感じがする。先程殴られたせいだろうか。いや、これは 現実の重量だ。ヘルメットを被っているような感覚である。そして 目を開けると、視界にはVBの画面しかなかった。



第二十回 終


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