第二十一回へ第二十回 レッド・セミナー#4 死角
私は嫌な夢を見ていた。目を覚ますと、誰かが無理矢理私にVB をやらせようとするのだ。それが現実の続きであることに気付き、 私は愕然となった。何故こんなことになってしまったのだろうか。私は懸命に記憶の 糸を手繰りよせた。だが、思い出されたことは苦痛そのものだった。
「やはりあそこに行かれるのですね」
唐突に私の前に現れたシンパが、声を掛けてきた。最後に会った のは昨日だったが、幾分生気を取り戻した顔をしていた。
「…何故、君がここにいる」
「……やはり……あの同好会のところへ行くつもりですね」同好会…VB同好会。かつて私が取材に赴いたときに戦慄させら れた、存在そのものが奇怪としか言い様が無い、しかしある高校内 に確実に存在する同好会である。ちなみに、この同好会の所在を明 らかにしてくれたのは、シンパである彼である。
「彼らは危険です。実は先日私が30円で購入したVB…あれには彼 らの手によって改造が施されていたのですよ。恐るべきことに、特 定のゲームでダメージを受けると、こめかみに電気ショックが走る ようになっていたのです」
シンパは私と並んで歩きながら、恐るべき事実を語り始めた。
「外見は普通のVBとほとんど変わりありません。どこでどうなっ たか、中古市場に出回ってしまったようですが…。彼らは、私から それを取り戻そうとしていました。おかげで、酷い目に遭いました が…」
シンパは語り終えると、深くため息をついた。まるで一度に数年 分は年をとったような疲労感が感じられる。
「話をしてくれたことには礼を言うが…これで君はさらに酷い目に 遭わされるかもしれんぞ」
「心配ありません。さらに酷い目に遭わされるのはあなたですから」何っ!? 言葉を発する暇もなく、突然後頭部を襲った衝撃が私 の意識を奪い去った。
頭が重い感じがする。先程殴られたせいだろうか。いや、これは 現実の重量だ。ヘルメットを被っているような感覚である。そして 目を開けると、視界にはVBの画面しかなかった。
第二十回 終