タイトルへ

自作小説集へ

ボイラー室へ

第六回  戦慄の同好会(前編)

 私はある高等学校内で活動していると言われている、VB同好会 と接触することに成功した。

 この謎のベールに包まれた同好会は、以前から存在そのものが疑 問視されていた。何しろゲーム全般ではなく、VB専門の同好会で ある。無理もないことだった。情報を提供してくれたシンパの中に は、VB同好会は任天堂のサクラが触れ回った狂言であると言う者 さえいた。
 実際、私もこの件に関しては半信半疑の状態であったのだが、今 回幸運にもこの同好会の所在を確認し、取材することができたので ある。その経過について説明することは又の機会に譲ろうと思う。
「どうも。私が、VB同好会の会長です」
 そう言って出迎えてくれたのは現在高校3年生の、ひょろりと高 い身長を持つ男子生徒だった。
「部室はこちらになります。ご覧になりますか?」
「ええ、もちろん」

 意外にも、彼らはきちんとした部室を持っているようである。そ れ以前に、同好会としての活動ができるだけの人数を揃えているこ と自体が、私には軽い衝撃だった。だが、この後予想を大きく上回 る精神的衝撃に見舞われることになろうとは、このときの私には知 る由もなかった。

「ここが我がVB同好会の部室です」

 そう言って案内されてここまで来たのだが、それらしい部屋など 辺りには見当たらない。ただ一つ、『ボイラー室』と書かれた地下 室だけが目についた。

「あの…まさかとは思うのですが」
「ご想像の通りですよ。『ここ』が我がVB同好会の部室です」

 彼は私の発言を遮るように、口元に笑みさえ浮かべて言い放った。 私は彼に促され、吸い込まれるように地下への階段を降りていった。

 そこはボイラーの運転が発する轟音と漆黒の暗闇が支配する空間 だった。事実上、それ以外のものはここにはあるとは思えない。

「本当にここが部室なのですか?」

 私は不安に駆られ、思わず会長を名乗った男子生徒に尋ねていた。 その不安は、まだその生徒がここに実在するのだろうか、という不 安であったのかもしれない。

「もちろんです。聞こえませんか? あの音が」
「音?」

 言われて耳を澄ましてみると、確かにボイラーの轟音に混じって 何か電子音のようなものが響いている。それも、おそらくは複数の。

「どうぞ。懐中電灯です」

 会長に手渡された懐中電灯をすぐさまつけてみる。この暗闇では、 誰でもそうせずにはいられないだろう。だが、明かりに照らされた その光景を一目見て、私は慄然と立ち尽くしたのだった。

 なんと、そこでは会長を除く5人の生徒が5人揃って一心不乱に VBをプレイしていたのである。それは、異様を通り越した凶凶し い光景だった。



第六回 終


第七回へ

タイトルへ

自作小説集へ

ボイラー室へ