安静時から徐々に運動強度を上げていっても、ある強度まで血中乳酸濃度はあまり増加しません。この強度までは、エネルギーの必要量が主に有酸素系でまかなえ、生成した乳酸はすみやかにエネルギー源として再利用されます。有酸素系では、糖質と一緒に脂肪も燃焼しています。
さらに運動強度が強くなると、血中乳酸濃度が次第に上昇しだします。この領域では、無酸素系の比率が高くなり、乳酸の生成量も多くなりますが、なんとか再利用して筋肉への乳酸の蓄積を抑えています。
さらに運動強度を上げると、もはや有酸素系ではエネルギーの供給が追いつかなくなり、無酸素系が主に働きます。こうなると乳酸の生成量と使用量のバランスは崩れ、筋肉中の乳酸濃度はどんどん上昇します。そして乳酸が蓄積した筋肉は、ついにそれ以上の運動を続けることができなくなります。
このような関係から血中乳酸濃度を運動強度の指標とすることが可能です。
山地啓司、運動処方のための心拍数の科学、大修館書店、1994.