最大酸素摂取量(VO2max)の測定と同様に、トレッドミルや自転車エルゴメータなどで運動負荷を徐々に増加させながら、呼気ガス分析を行います。酸素摂取量は運動負荷に比例し増加しますが、二酸化炭素排出量はある酸素摂取量(運動負荷)から急激に増加します(下図)。このポイントが、換気性作業閾値(VT: Ventilatory Threshold)です。二酸化炭素排出量の急激な増加は次のように説明されます。筋肉を動かすエネルギーの源は、ATP(アデノシン三リン酸)という化合物です。筋肉に蓄えられているATPは、1秒程度、筋肉を収縮(=運動)させる分しかありません。ですからATPは、使いながら作り続ける必要があります。運動負荷が小さいときは、体内の糖や脂肪が酸素を利用しながらATPに変化し、筋肉でエネルギーとして取り出され、最終的には二酸化炭素と水に形を変えます。運動負荷が大きくなると酸素を使用して合成するATPだけでは、足りなくなってしまいます。そこで、酸素を利用せずに糖からATPを合成する機構が働きだします。この過程では同時に、疲労物質である乳酸が生成されることになります。この乳酸を処理しようとする時に、二酸化炭素が産出されるのです。
石井喜八、最大酸素摂取量の間接測定/猪狩道夫編著、身体運動の生理学、1973.