トレーニングゾーン

運動強度指標の選択

競技において記録向上を目指すには、指標に基づいて客観的に定量設定できる強度のトレーニングを導入し、計画的にレベルアップしていく必要があります。この観点での指標は、心拍水準酸素摂取水準血中乳酸濃度の3つです。下表にそれぞれの長所、短所をまとめます。また、健康の維持増進が目的なら、主観的指標による管理でも十分でしょう。
毎日のトレーニングにおいては、「心拍水準」が最も手軽で、かつリアルタイムでモニターできることから様々な分析や活用が可能な指標と言えます。
また陸上競技の中長距離種目においては、トレッドミルなどで、ランニングスピードと酸素摂取量や血中乳酸濃度の関係をあらかじめ測定しておき、日常は設定した「酸素摂取水準」や「血中乳酸濃度」に対応するランニングスピードでトレーニングするなら、それは間接的に「酸素摂取水準」、「血中乳酸濃度」を指標としたことになります。 

心拍水準
酸素摂取水準
血中乳酸濃度
長 所
  • 装置装着(心拍計:ハートレートモニター)による被験者の肉体的・精神的負担は小さい
  • リアルタイム計測が可能
  • 比較的安価
  • 研究例が多く、無酸素・有酸素的エネルギー供給機構との関係も合理的に説明されている(計測されたVTは必ずしもLTと一致しない)
  • 研究例が多く、無酸素・有酸素的エネルギー供給機構との関係も合理的に説明されている(計測されたLTは必ずしもVTと一致しない)
短 所
  • 競技種目によってHRTが異なる
  • HRTの屈曲点が現れないこともある
  • 無酸素・有酸素的エネルギー供給機構との関係に不明瞭な点が多く、HRTは、LTやVTに比べて、高い値となりがち
  • トレッドミルや自転車エルゴメーター、呼気ガス分析器など、大がかりな装置が必要となる
  • 最近では、トラックやロードでも使用可能な携帯型のガス分析器があるが、それでも少なからず被験者の負担となる
  • リアルタイム計測が困難
  • 指先や耳たぶから微量の血液を採る必要があるため、被験者の負担となる
  • 体調によってLTが変わる
  • 測定に時間がかかり、トレーニングしながらのリアルタイム計測には不向き